★ メンタルヘルス対策の実効性を高めるには?

  労働安全衛生法に基づく「労働者の心の健康保持・増進のための指針」(厚労省)では、事業者に対して、中長期的な視点から「心の健康づくり計画」を審議・策定して、組織的かつ継続的な取り組みを推進することを求めています。

  しかし、「こころ」というテーマの極めてデリケートな性質もあって、紋切型のマニュアル化した施策では成果が出にくい点にも留意が必要です。

  そこで、実践的な観点から、職場のメンタルヘルス対策が効果を上げるための工夫や方法について、以下に整理しました。


① 全職員・従業員に向けて、経営トップの方針として、メンタルヘルス対策の必要性や意義、及び取り組みの基本的な姿勢など、健康配慮義務を徹底・履行する意志を明確に表明すること。

 

② メンタルヘルス対策の目標を、「病気の予防と対処」という消極的・個人的レベルに止めず、積極的・全社的な「人材育成」「能力発揮」「組織の活性化」等のポジィティブな課題に連結させること。

 

③ 各種対策の導入に際しては、偏見や誤解による抵抗感や拒絶等を排除するよう、「心の相談」ではなく「健康相談」と呼称するなど、できるだけ「心の問題」と「体の問題」を分離させないで、「健康問題」として一体的に取り扱う実務上の配慮を加えること。

 

④ 管理職の日常的マネジメントとして、メンタルヘルスケアの土台となる「良好な人間関係の形成」や「コミュニケーションの改善」に積極的に焦点をあて、日頃の職場運営の在り方を創意工夫すること。

 

⑤ メンタル不調者への関わり方では、気遣いや遠慮で心理的距離が開きがちだが、支援者はむしろ「一歩踏み込む」ほどの姿勢(気持ち)が必要となる。ただし、一方的に「励まし」「説得」するのではなく、親身になって共感的に「傾聴」「理解」する態度が肝要。

 

⑥ 長期の欠勤や休職に際しては、その初期段階から、「主治医と職場担当者との面談」を本人を交えて行うよう取り計らうこと。面会して情報を交換し、療養及び職場復帰に向けて支援の在り方を協議・検討するなど、医療側と職場側が直接的に連携することは(難しさも有るが)極めて有益です。

 

⑦ 予防的観点からは、体の健康診断システムと同様に、各種チェックリストを利用して「心の健康診断」を集団実施するなど、個人の「心の健康管理」も制度的にシステム化することが望ましい。併せて、その集団データにより職場環境の改善を図ることは、「モラール向上」など組織全体の活性化にも繋がる取り組みとなります。