★ メンタルヘルス対策において必要な基本的な配慮とは?

 

 職場のメンタルヘルス対策には、治療と再発防止(3次予防)、早期発見と対処(2次予防)、未然防止と健康増進(1次予防)など、幅広い取り組みがあります。


 ただ、「心の問題」の特質として、各種対策の実施に際して基本的に配慮すべき点があります。

 

 それは、「体の問題」と違って「心の問題」では、語り手に「抵抗感」や「恥かしさ」などが、聞き手には「遠慮」や「ためらい」などが生じやすく、相互理解が疎外されやすい点です。

 

 誰もが「頭が痛い」とは気軽に言えても、「人間関係に悩んでいる」とは言い難いと感じます。学校の「保健室」には多くの生徒が訪れますが、「カウンセリングルーム」は閑古鳥が鳴いてます。

 

 また、「内科」は自分で受診できても、「心療内科」や「精神科」は初診の8割以上が「周囲の勧めで来院」という調査結果があります。

 

 「心の問題」に関して自発相談や受診が遅れるのは、関連知識を有する医療関係者でも認められる傾向です。つまり、知識よりも感情面の影響が大きいのです。

 

 そこで、メンタルヘルス対策の実効性を高めるために、次のような点を考慮したいものです。

 

 ひとつは、実践面では「こころ」と「からだ」を切り離さずに、一体的・総合的に扱う工夫です。例えば、「健康管理」の視点から産業保健師が統括的役割を担うなど、「メンタルヘルス」を特殊化しない活動形態が大切です。

 

 さらに、周囲の関係者は、遠慮して「一歩退却」(腫れ物扱い)しないこと、また、いたずらに「本人任せ」にしないことです。相互理解と相互信頼を深めて、適切な問題解決を図るためにも、親身な「一歩踏み込んだ関わり」(共感的コミュニケーション)が不可欠です。

 

(健康創造情報誌「かるーなくらぶ」Vol.28(2010)済生会熊本病院健診センター発行に掲載)